表示設定

文字サイズ
行間
フォント
背景
文字方向

三十の手前

第1話 / 全5話 · 227字 · 約1分


 その話を聞いたのは、冬の終わりだった。

 友人は酒の席で、冗談とも本気ともつかぬ口調で言った。
「知り合いにさ、“胆戦心驚一族(たんせんしんきょういちぞく)”って呼ばれてる家があるんだ」

 奇妙な呼び名だった。
 胆を戦わせ、心を驚かせる一族――恐怖を意味する四字を並べただけの、半ばあだ名のような名。

「代々、三十を迎える前に必ず死ぬ。例外なし」

 私は作家として、その言葉を聞き逃せなかった。




目次 次の話 »

この話への感想

まだ感想はありません。