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麻鬼

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誘い

第3話 / 全3話 · 1,567字 · 約4分
第三話

FCアマガウが強豪相手に引き分けた翌日。

クラブハウスには普段とは違う空気が流れていた。

選手たちも噂を聞いていた。

「昨日、2部のスカウトが来てたらしいぞ。」

「誰を見に来てたんだ?」

「さあな。」

翔は黙ってロッカーの扉を閉めた。

余計なことは考えない。

今は目の前の練習だけだ。

そう自分に言い聞かせた。



練習試合の日。

FCアマガウの相手はブンデスリーガ2部所属のクラブだった。

格上との一戦。

観客席には複数のスカウトが集まっていた。

試合前。

ルーカス・オブライヴが翔の肩を叩く。

「緊張してるか?」

「少し。」

「なら安心だ。」

「え?」

「緊張しなくなったら成長が止まる。」

翔は少し笑った。

ルーカスはキャプテンらしく、いつも不思議と落ち着かせてくれる。



試合開始。

格上の相手はやはり強かった。

パススピード。

判断力。

フィジカル。

どれを取っても一段上だった。

前半だけでFCアマガウは何度もピンチを迎える。

しかしGKの好セーブで耐え続けた。

0-0のまま前半終了。

---

後半開始直後。

相手のミスからチャンスが生まれる。

ルーカスがボールを奪う。

すぐに翔へ縦パス。

翔は相手DFを背負いながらトラップする。

振り向けない。

だが無理やり突破するのも危険だ。

その瞬間。

翔はヒールで後ろへ流した。

走り込んだ味方がシュート。

ゴール。

1-0。

FCアマガウ先制。

スタンドがどよめく。

格上相手の鮮やかな崩しだった。


だが2部クラブも黙っていない。

後半70分。

セットプレーから失点。

1-1。

さらに82分。

カウンターを受ける。

相手FWが抜け出した。

絶体絶命。

しかしルーカスが全力で追いかける。

スライディング。

ボールだけを奪い取った。

観客席から大歓声が起こる。

「ナイスだ!ルーカス!」

翔も叫んだ。

ルーカスは立ち上がりながら笑った。

「まだ走れるぞ!」



試合終了間際。

アディショナルタイム。

最後のチャンスだった。

翔が中盤でボールを受ける。

前には二人のDF。

左には味方。

右にはスペース。

翔は右へ蹴り出した。

一気に加速する。

DFが追う。

もう一人も追う。

それでも止まらない。

ペナルティエリアへ侵入。

キーパーが前へ出る。

翔は右足を振り抜いた。



ボールはゴール左隅へ突き刺さった。


2-1。

FCアマガウ逆転。

スタジアムが揺れるほどの歓声だった。

---

試合後。

選手たちが引き上げる中、一人の男が翔へ近づいてきた。

黒いコートを着た男だった。

「天城翔か。」

流暢なドイツ語。

胸元には2部クラブのエンブレム。

「今日のプレーは素晴らしかった。」

翔は息を飲む。

男は名刺を差し出した。

「近いうちに、君について話をしたい。」

そう言い残し去っていく。

翔は名刺を見つめた。

そこにはブンデスリーガ2部のクラブ名が刻まれていた。

ドイツへ来た日から追い続けてきた夢。

その第一歩が、すぐ目の前まで来ていた。
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