はじまり。そして決意
第1話 / 全3話 · 1,324字 · 約3分
# テッペン
ドイツ南部、オーバーアマガウ。
美しい山々に囲まれた小さな町にあるサッカークラブ――FCアマガウ
そのクラブに所属する23歳の日本人選手、**天城翔**はロッカールームの隅でスパイクの紐を結んでいた。
壁には先発メンバー表が貼られている。
今日も自分の名前はない。
翔は静かに立ち上がった。
悔しくないわけがない。
日本を飛び出し、言葉も分からない国へ来た。
友達も家族もいない。
それでもサッカー選手として成功するためだった。
だが現実は厳しい。
FCアマガウでの立場はベンチ要員。
出場機会はほとんどない。
チームメイトからも「日本人の努力家」程度の評価しかされていなかった。
試合開始から80分。
FCアマガウは0-1で負けていた。
監督がベンチを振り返る。
「ショウ。」
翔は顔を上げた。
「準備しろ。」
ついに出番だった。
背番号18。
ユニフォームを整え、ピッチへ向かう。
観客はわずか数千人。
だが翔にとっては世界最大の舞台に見えた。
交代。
翔はピッチに足を踏み入れる。
冷たい風が吹く。
心臓が速くなる。
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残り時間は10分。
ボールを受ける。
奪われる。
もう一度受ける。
また奪われる。
観客席からため息が聞こえた。
それでも翔は諦めない。
走る。
追う。
食らいつく。
すると89分。
味方MFがロングボールを前線へ蹴った。
誰も届かないと思われたボール。
だが翔だけは追っていた。
全力で。
相手DFよりも先に。
ボールに触れた瞬間、体を反転させる。
DFをかわす。
ゴールまで一直線。
キーパーが飛び出す。
翔は右足を振り抜いた。
ドンッ!!
ボールはゴール右隅へ突き刺さった。
スタジアムが沸く。
「ゴォォォォォル!!」
実況が叫ぶ。
仲間たちが駆け寄る。
翔は拳を握り締めた。
同点。
だが終わりではない。
アディショナルタイム。
FCアマガウは勢いに乗る。
そしてラストプレー。
クロスが上がる。
混戦。
こぼれ球。
翔の前へ転がる。
迷いはなかった。
左足一閃。
ネットが揺れる。
2-1。
逆転。
試合終了の笛が鳴った。
観客席は総立ちだった。
監督もチームメイトも翔を抱きしめる。
しかし翔は空を見上げていた。
まだだ。
ドイツ3部リーグ。
こんな場所で満足するつもりはない。
FCアマガウから始まる物語。
目指すのはブンデスリーガ。
チャンピオンズリーグ。
そして世界一。
天城翔は誰にも聞こえない声で呟いた。
「待ってろ。俺は必ずテッペンまで行く。」